妻が10年前に他界して以来、その悲しみを乗り越えられずにいる夫と娘。ただただ日常を送り、失意の中にいた彼らの元に突然現れたのは、他界したはずの妻だった。
しかも妻は小学生になっていた!?
Twitterで話題となったこちらの作品。もう二度と会えないと思っていた最愛の人と再び会えたなら…あなたならどうしますか?
妻、小学生になる。

2巻まで読んでみたよ。
失って気づく大切な人と過ごす時間
そばにいるのが当たり前だと思っていた妻の存在。いつも妻が作ってくれていた手料理や弁当はもう二度と食べることはできません。「もう二度と、作ってもらうことはできないんだな…」と葬儀を終えた夫・圭介は、台所に立ちつくしたまま泣き崩れます。
「もちろんこれからも作ってあげるわよ」と毎朝弁当を作ってくれていた妻・貴恵を思い出す回想シーンは涙なしには読めません。
一緒にいることが当たり前だった大切な存在が、突然自分の日常生活から消えてしまったら…残される方の気持ちが痛いほどに伝わってくる、そんな作品です。
いずれ麻衣(娘)が結婚してどこかに嫁いでいったら十分二人でいられる時間が来るじゃないか。
だから今は全然かまわないさ。
なに、時間はたっぷりあるから楽しみにしててくれ。
村田椰融 『妻、小学生になる。』
貴恵が生きていた頃は「時間はたっぷりあるから」と、二人ででかけることや二人で過ごす時間を後回しにしていた圭介。
再び亡き妻・貴恵に会えた圭介は貴恵に対して「今度は絶対に後悔したくない。」と1分1秒も貴重な時間を無駄にはしたくないという自分の気持ちを伝えます。
家族を繋ぐ「食事」
この作品の中で、家族を繋ぐものとして表現されているのが「食事」です。
妻が亡くなってからというものコンビニ弁当で食事を済ませる夫・圭介と娘・麻衣。食事中の二人の間には会話も笑顔もありません。
小学生となって帰って来た貴恵は、そんな二人にこう言います。
夕飯だけは何があっても彩りある食卓に しようって決めたでしょ!
質素でもそれが家庭にとってどれだけ大事なことかも説明したじゃない!
村田椰融 『妻、小学生になる。』
家族との絆が希薄になっている現代において、しっかり家族と一緒に食事をとっている家庭も少なくなってきているのではないでしょうか。
この貴恵の発言は「食事」が家族を繋ぎ、絆を深める上でいかに重要なのかを再認識させてくれます。
大切な人を失い、前を向いて進めるか
「お前が全てだった。お前と皺だらけになるまで年をとり、一緒に世界を見ていくことだけが生きがいだったんだ…!」という夫・圭介。
それに対し、このような形で再開できたのも奇跡だという妻・貴恵。
ホントはあなた達には私の死を乗り越えていてほしかった
村田椰融 『妻、小学生になる。』
亡き妻・貴恵の家族に対する本当の想いは、自分がいなくても家族が前を向いて進んでいけること。
本当に私に感謝してるのなら、私がいなくても進んでいけるっていう姿勢と未来を見せてよ!
村田椰融 『妻、小学生になる。』
妻・貴恵の願いを知った夫・圭介。家に帰ると、スーツを着た麻衣がいました。これから転職活動をするのだと言う麻衣。部屋にこもりがちで在宅ワークをしていた頃と比べると、表情も生き生きとしています。麻衣もまた少しずつ前へ進み始めました。
その日、麻衣と圭介は一緒に夕飯を作り、笑顔で食事を共にします。
失った部分をそのままにしておくことを望むんじゃない。
欠けた部分と向き合って生きていくこと。それを妻は望んでくれていた。
だからこそ一日一日を前向きに大切に生きていこう。
それがあの最愛で最高の妻に贈る最上のプレゼントとなるはずだから。
村田椰融 『妻、小学生になる。』
圭介は「欠けた部分と向き合って生きていく」覚悟を決めました。
「自分の死を乗り越えて進んでいって欲しい」と願う貴恵。再会を喜び、再び動き出した圭介と麻衣。3人の今後の展開から目を離せません。大切な人を失い、前を向いて進めるのでしょうか。
感想・まとめ
突然違う形で再会することになった家族。
大切な人を失い、残された方の気持ちも、亡くなった方の気持ちも痛いほどに伝わってきます。
本当に大切な人との時間は「今」大切にしなければならないということ、家族との「食事」の大切さ。この作品を通して何か大切なことを再認識させられたような気がします。
そして、現在小学生の元妻にも今の家庭や人間関係があり、それは夫の圭介も同じ。
これは奇跡なのか、今後の展開が見逃せない。
ぜひ、一度読んで欲しい素敵な作品です。

